仏教伝道文化賞
仏教伝道文化賞・功労賞

- 仏教伝道文化賞選定委員会
(金光寿郎委員長、2010年1月20日)

- 仏教伝道文化賞贈呈式
この二つの賞は、国内外を問わず、幅広い分野にて仏教伝道文化の発展に貢献された方がたの、その労に感謝し讃えようという意図から制定されました。毎年、仏教伝道文化賞選定委員会を開き二名お選びし、顕彰してまいりました。
文化賞は、
A項 研究 論文 著述 翻訳 踏査 出版 その他、
B項 文芸 美術 音楽 評論 その他、
C項 伝道者 実践者 その他
の各項より選定し、功労賞は選定委員の推薦により贈られます。
第45回仏教伝道文化賞受賞者
仏教伝道文化賞A項
信楽 峻麿 師
1926年広島市生まれ。龍谷大学元学長、龍谷大学名誉教授。本願寺教団の伝統的な真宗理解と、その宗学を超えた真宗教学の確立。
讃辞文
道の人
信楽峻麿先生は、早い時期から宗派内で行われてきた親鸞に至る浄土教理についての伝統的な理解に疑問を抱き、浄土教における信の思想を釈尊から大乗仏教に至る行道思想の展開の中で位置づけることを企図され、親鸞の信の思想に至る思想史的背景を明らかにされました。初期の代表的な著作『浄土教における信の研究』はその果実であり、さらにその研究成果を基礎に親鸞思想の大乗仏教的な意義を解明するとともに、親鸞以降の真宗理解を批判的に検証することで、現代における真宗教学の構築に取り組まれました。その成果は主著『親鸞における信の研究』として纏められていますが、これらの著作により先生は浄土教研究、就中親鸞研究において新しい局面を開かれました。
先生の学問態度は、近代的な学問にもとづく客観的な理解・把握を重視しつつも、自己が主体的にその根本原理に参与するところに本来的な意味の立脚点を求めるところに特色があります。それは、おのずと自己そのものに対し厳しい問いかけを生むものであるとともに、現実状況に対する批判精神の原点を自らの内に持つものです。平和、人権、脳死問題、さらには真宗教団が抱える課題に対して、親鸞思想を原点として、先生が積極的に、時には厳しい発言を続けてこられる根拠もそこにあります。私が学生時代、先生のもとには、海外を含め実にさまざまな人たちが参集していました。それは何よりも、自らも道を歩むものとして他者に接する先生の研究態度が、今を生きる念仏者の姿と重なったからに外なりません。
龍谷大学を定年で退かれてからの先生は、親鸞の主著『顕浄土真実教行証文類』の思想の解明に力を注がれ、大著『教行証文類講義』全九巻を刊行されました。しかしそれに止まらず、先年、新たに書き下ろされた著作が大半を占める『信楽峻麿著作集』全十巻が完結しました。またさらに最近、一般に分かりやすく親鸞の思想を説くシリーズ本(十冊)の執筆に取りかかられ、既に四冊を刊行されました。私にとりその姿は、念仏者として最後まで正理と法の領域を歩もうとするまさに「道の人」であり、尊敬の念とともに今回の受賞を心からお慶び申し上げます。
嵩 満也(龍谷大学教授)
仏教伝道文化賞C項
アハンガマゲー・テューダー・アリヤラトネ氏
1931年スリランカ生まれ。仏教精神に基づくサルボダヤ・シュラマダーナ運動を世界的に普及。
讃辞文
仏法を開発プロセスに導入
A・Tアリヤラトネ氏は、まさに「エンゲイジド・ブッディスト」そのものであり、ここ20年来私の精神界の恩師である。
氏は、四聖諦、八正道、などの仏法を農村開発運動の基本原理とした「サルボダヤ・シュラマダーナ運動」を半世紀以上前にスリランカで起こされた。それ以来、最も貧困の農民たちの自助努力とボランティア精神による開発への住民参加を呼びかけ、社会を改革してこられた。仏教が精神生活の向上に重要であるのみならず、よりよき社会構築のために、社会・経済・政治にも適用されうることを、実証してこられた。つまり、ブッダの教えを開発行動に移されたのである。半世紀を経て、サルボダヤは15000の村落(同国土の3分の1)が参加する一大農村開発事業と発展し、世界的な注目と賞賛を集めている。
他の宗教信徒も含むスリランカ国民にブッダの尊い教えを伝道してきたサルボダヤは、同国最大の平和勢力となった。30年間に及んだ国内戦争中も一貫した非暴力と平和への信念から、戦争区域で救済、復旧、和解などに努めた。サルボダヤの平和構築における実績は、国際社会から高く評価されている。
氏から研修を受けた多くのボランティアが、仏法に基づいた普遍的な理論と実践方法で、持続的開発と平和に向かって欧米・アジア諸国で努力していることは極めて喜ばしい。
また、氏は世界各国の政府やNGOからの招待で、毎年数十回と精力的に各地で講演され、多くの人々に瞑想を教えてもこられた。この半世紀、世界的に仏教伝道に最大の貢献をされたおひとりである。
氏は、著書で「現代世界の願望と現実に適した仏の教えを再発見することこそが、21世紀最大のチャレンジである」と指摘され「仏教徒の団結は、国際社会が今日直面する無数の問題と対処するうえで不可欠である。日本のような経済・科学技術で最先端にある国の仏教徒が指導力を発揮すべきである」と日本の仏教徒に期待を寄せられている。
仏法に基づく精神性・倫理基準・道徳的価値を経済開発に導入されたことが氏の最大の貢献であると思う。仏教精神を開発に適用することに成功され、道徳的権威として世界的に尊敬されている氏の授賞を心から讃えたい。
杉浦正健(第77代法務大臣)







